冬の東北鍋と熱燗
雪景色を眺めながら味わいたい、東北の鍋料理と熱燗を紹介。
きりたんぽ鍋やせり鍋、じゃっぱ汁などを楽しめます。
「あぁ、冬ってこんなに寒かったっけ……」都会のビル風に吹かれ、思わず肩をすくめて歩く帰り道。もしあなたが、寒さに凍える心と体を「芯から解きほぐしたい」と願うなら、迷わず東北行きのチケットを手に入れてほしいのです。そこには、凍てつく冬だからこそ出会える、最高に贅沢で、そして優しい時間が待っています。正直なところ、冬の東北は厳しいです。手足はしびれ、鼻先は赤くなる。でも、ここだけの話、その「厳しさ」があるからこそ、一口の鍋料理と一杯の熱燗が、大げさではなく涙が出るほど美味しく感じられるんです。
窓の外に広がる、音を吸い込むような真っ白な雪景色を眺めながら、湯気が立ち上る鍋を囲む。これこそ、日本人に生まれてよかったと心底思える、冬の究極の過ごし方だと思いませんか?黄金色の出汁が染み渡る、秋田「きりたんぽ鍋」の誘惑東北の冬鍋を語る上で、秋田の「きりたんぽ鍋」を避けて通ることはできません。比内地鶏のガラを贅沢に使った黄金色の出汁。そこに、囲炉裏で香ばしく焼かれた手作りのたんぽが沈められていきます。グツグツという音とともに立ち上る湯気を思い切り吸い込むだけで、もう幸せな気分に包まれます。驚くことに、本場のきりたんぽ鍋は、最後に入れる「セリ」が主役級の存在感を放ちます。シャキシャキとした根っこの食感と、地鶏の濃厚な旨味。これらをハフハフと口に運び、熱々のまま飲み込む。そこに合わせるのは、秋田が誇る銘酒「新政」や「高清水」の純米酒を、絶妙な「上燗」で。お酒の温度が上がることでふわりと開くお米の甘みが、鍋の深いコクと見事に調和し、指先までポカポカと温まっていくのがわかります。
荒波の恵みを、静寂の中で。宮城・青森の海鮮鍋一方で、海沿いのエリアに目を向ければ、そこにはまた別の天国が広がっています。例えば、宮城の「仙台せり鍋」や、冬の王様・鱈(たら)を余すことなく使った青森の「じゃっぱ汁」。特に、この時期の鱈は身がプリッとしていて、濃厚な「白子(きく)」が口の中でクリーミーにとろけます。窓のすぐ外には、鉛色の海と、その上に静かに、しかし絶え間なく降り積もる雪。そんな「動」と「静」が共存するモノトーンの絶景を肴に、辛口の地酒をちびりとやる。都会の喧騒の中では、どんなに高級なレストランでも絶対に味わえない「鮮度という名の贅沢」がそこにはあります。「あぁ、もう一杯だけ」そんな独り言が、無意識のうちにこぼれてしまう。それは決して酔いのせいだけではないはずです。
温泉宿の「こたつ」で、自分を初期化する贅沢もしあなたが、日々の仕事や人間関係で少し疲れを感じているなら、この冬は東北の温泉宿に籠もってみることをおすすめします。古びた木造旅館の、どこか懐かしい匂いのする部屋。窓際に置かれたこたつに入り、雪が降り積もる様子をぼんやりと眺める。夕食には、その土地の猟師が仕留めた鴨を使った「鴨鍋」や、山形の冬の定番「芋煮」が運ばれてきます。「何もしない」という、現代において最も困難で贅沢な時間。キャンドルのような温かい熱燗の徳利を手に、ただ目の前の美味しさと向き合う。そんな時間を過ごしていると、不思議なことに、頭の中を占領していたモヤモヤが、雪の中に溶けて消えていくような感覚になります。
「寒いからこそ、あたたかい」という幸せ東北の冬は、私たちに大切なことを教えてくれます。厳しい寒さがあるから、火の温もりがありがたい。凍えるような外気があるから、誰かと囲む鍋が愛おしい。そのシンプルな幸せを再確認するために、この冬、少しだけ勇気を出して、雪深い東北へ出かけてみませんか?帰り道、駅のホームで吐き出す息はまだ白いかもしれません。でも、あなたの心の中には、雪景色よりもずっと温かくて力強い、明日への活力がしっかりと灯っているはずですよ。


